今、我が国のさらなる経済成長の実現に向け、電子デバイスを始めとするIT・エレクトロニクス産業への期待がこれまでにも増して高まっています。
近年のIoTやAIなどの発展により、今まさに情報技術が社会を変える転換期を迎えています。 こうした中、我が国が引き続き競争力を維持していくため、経済産業省では、8月末に示した重点政策の第一の柱に「ITによる産業構造・経済社会の革新」を据えました。 これは、IoT、AIなどの研究開発や利活用を進め、こうした新たな情報技術がもたらす変革を先取りし、官民が協働して次世代の産業構造や経済社会への転換を図るというものです。
私は前職で、来年度から始まる次期科学技術基本計画の検討に関わっていましたが、その中で、幅広い分野でのイノベーションの原動力となる「共通基盤技術」の強化の必要性を議論していました。 そして、本年7月にデバイス産業戦略室長に着任し、日々業務に当たる中、半導体などの電子デバイスが我々の生活や産業活動をあらゆる面から支え、かつ、それらの進化に不可欠な役割を果たしていること、電子デバイスこそ”幅広い分野でのイノベーションの原動力”であることを改めて強く実感しました。
まさに、今世界的にも注目を集めているIoTは、スマート工場といった製造分野、自動走行といったモビリティ分野、インフラの効率的な運営・維持・管理はもとより、健康・医療、サービス、物流、流通、保安、農業、行政など、幅広い分野での展開が期待されます。 このような多様な分野で効果的なIoTを実現するためにも、電子デバイス産業が分野横断的な基盤・原動力としての役割を十二分に発揮することが必要です。
そのためには、IoTによって世の中にとって訴求力の高い新しい価値を生み出すことが基本となります。これを個社や電子デバイス産業だけで実現していくことは困難です。分野を超え、企業規模の違いを超え、ソフト・ハードや業種・業態を超えたオープンイノベーションが不可欠です。場合によっては、海外のプレーヤーとWin-Win関係を築きグローバルなコラボレーションをしていくことも必要です。
その際、ユーザー目線で潜在ニーズを掘り起こせるか、いかに新たな価値の意義を伝えられるかが極めて重要になります。電子デバイスは様々な分野で不可欠な存在である一方、ユーザーの方では必ずしも意識している訳ではありません。他方、電子デバイスは技術的にも専門性の高い分野です。このため、IoTでこれまで以上に多様な分野、多様なプレーヤーとの協働・コミュニケーションが必須となる中、異分野のパートナーや潜在顧客の立場に立って、新たに創造しうる価値の魅力をわかりやすく伝えていくことが成功するための鍵といえます。
また、新たな価値は顧客の既存の価値観の延長線上にあるとは限らず、非連続な技術の創出などにより、突然「飛び地」的に生まれることもあります。IoTによる経済社会の変革には、こうした「飛び地」を生み出すきっかけとなる革新的な技術の開発も重要です。
こうした中、経済産業省では、IoT推進に向け、分野等を越えた様々なプレーヤーが連携し新たなビジネスモデルを生み出すきっかけとなる産学官の枠組「IoT推進ラボ」(仮称)の設立や幅広い分野での実証、革新的な技術の研究開発などに取り組んでまいります。
一般社団法人日本電子デバイス産業協会(NEDIA)におかれては、これまでも電子デバイス産業における川上から川下まで業態を超えた連携や、異分野との連携などを通じて、電子デバイスを核とした成長産業創出に取り組んでこられました。
我が国はもとより、世界的にもIoTによるイノベーションへの取組が本格化していく中、この機を生かし、NEDIAとしてますます活動の幅を広げ充実を図られるとともに、各会員の皆様が一層のオープンイノベーションを進めご活躍されることを期待いたします。
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