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■「第35回高周波アナログ技術トレンドセミナ」の報告
~パワーモジュール放熱技術の動向~
開催日時:平成26年7月15日(火)14:00-17:00
開催場所:京都テルサ西館3階 第2会議室 (京都府民総合交流プラザ内)
今回のテーマに、自動車、電 車、ロボット、モータ、太陽光 発電、風力発電、空調など、幅 広い分野において、電力制御に 使われているパワーモジュール の放熱技術を取り上げた。パワ ーモジュールとその放熱機器に は、小型・高密度化、大放熱化、 高耐熱化が進んでいる。この分 野の最前線で活躍されている 3 名の方を講師にお招きし、最新 の状況、将来動向などをお話し 戴いた。
47名の参加があり、講演後に は質問が多く出た。 また、セミ ナー終了後の交流会にも多くの 方々が参加され、講師を囲んで 活発な意見交換が行われ、様々 な新たな連携が促進された。
以下、講演概要を報告する。
1.基調講演 「パワーモジュールの放熱設計と信頼性」
加柴良裕氏 (三菱電機株式会社生産技 術センター主管技師長)
現在主流のIGBTパワーモジ ュールでは、最近の30年間の微 細加工の進歩によって、損失が1/4 に改善された。また低損 失化に加えてパッケージの高放 熱化、ジャンクション温度の高 温化により、パワーモジュール のパワー密度は、2000年からの10年で5倍近くに向上している。
特に、SiCデバイスの実現によ って、小形化は加速される。産業用モジュールでは、放熱 および電気絶縁用レジンシート を用いることにより、モールド 樹脂封止型パワーモジュールが 実用化されている。更に小形化 の為に、パワーモジュールの両 面冷却、パワーモジュールと放 熱器をグリスレス接続する方向 に技術開発が進められている。 チップ下接合部の信頼性向上には、モールド樹脂による封止、 はんだ剤の機械特性の改善、銀 ナノ粒子を用いた焼結接合等の はんだレス接合の技術が開発さ れている。チップ上接合部の信 頼性向上には、モールド樹脂に よる封止、Alワイヤボンドレス 構造(リード接合、リボンボンデ ィング、Cuワイヤボンディング等)の開発が進んでいる。
パワーモジュールの実装技術 として、チップ、配線導体、フ ィンベースをモールド樹脂によ り一体化した後、フィンを加締 め加工するパワーモジュールの 開発も進んでいる。
今後は、インバータまでを捉 えたインテグレーション技術が 重要である。
2.講演 「各種接触熱抵抗低減 材料の有効熱伝導率測定法 と
ヒートパイプ式高性能空冷ヒートシンクの開発事例紹介」
大串哲朗氏 (広島国際大学工学部情報通信学科客員教授)
パワーモジュールのベース板 からヒートシンクに放熱する時 の界面熱抵抗を減少させること の重要性が指摘された。
ここで、フィラー剤と伝熱面(ベース板やヒートシンク)間に生じる接 触熱抵抗が界面熱抵抗である。 界面熱抵抗には、伝熱面のうね りや表面粗さや酸化状態、押し つけ圧力、硬さや熱伝導率など 多くの因子が影響している。な お、伝熱面の金属どうしが強固 に接触している部分は対向して いる面積の1/10000程度である。
この界面熱抵抗を測定する装置を開発した 。測定の原理は一 方向熱流定常比較法である。
こ の装置では、接触式変位計を用 いて接触面空隙部長を測定でき、 接触面の圧力の調整が出来る。 シリコーンゴムシートの熱抵抗 を測定した結果では、接触面の 圧力が100kPa以下ではシート 材の伝導熱抵抗より界面熱抵抗 の方が大きい。
圧力を500kPa 以上に上げると、界面熱抵抗は 低下し、シート材の伝導熱抵抗 が支配的になる。
JIN MAOビルディング(上 海)向け超高速エレベータの巻 上機用IGBT モジュールのヒー トシンクの開発例が紹介された。 ここでは、空調用熱交換器をヒ ートシンクに応用し、ヒートシ ンクの冷却能力を従来に比べて約3倍に向上できた。空調用熱 交換器は次の様な特長を有して いる。
・フィンの放熱性能が大 ヒ ートシンクを小型化できる。
・銅パイプを使っているので、 ヒートポンプの作動流体に水を使用できる。
3.講演 「パワーモジュールの 高放熱化技術-モールド 型モジュールを中心に-」
三村研史氏 (三菱電機株式会社 先端技術総合研究所主席研究員)
最新のモールドタイプのパワ ーモジュールでは、ヒートスプ レッダーの下に高熱伝導絶縁シ ートを配置しており、このシー トを経由してパワーチップの発 熱をヒートシンクに放熱する。 高熱伝導絶縁シートは電気絶縁 性と高熱伝導性を兼ね備えたシ ートで、熱伝導性の高い粒子を フィラーとした複合樹脂材料で 作られている。
代表的なフィラーは鱗片状の六方晶BN(h-BN)である。h-BN の充填率を70%以上の限界まで 高めた複合樹脂材料の熱伝導率 は10W/mKレベルで、ほぼ限界 に達している。そこで、鱗片状 のh-BNの配向方向を分散させ る工夫によって、複合樹脂材料 の熱伝導率を更に向上させるこ とが可能である。
また、マトリックス樹脂の熱 伝導率を大きくすることによっ て、複合樹脂材料の熱伝導率を 大きくできる。樹脂の熱伝導率 を大きくする方法として、樹脂 に液晶骨格を導入する方法や磁 場配向による方法が研究されて いる。これらの方法によって、 エポキシ樹脂の熱伝導率を0.8~0.9W/mK程度に向上できる可能性がある。
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