案内記事>> 出展:NEDIA通信No11
■「SSIS- NEDIAシンポジウムin大阪」の報告
テーマ: 「電子デバイスの新たな挑戦」
□交流会(8/29):オープンゴルフ in 大阪
株式市場から電機業界を見ると、業界の皆さんとは違った視点 で電子デバイス産業の発展を見ることができる。電機業界の株価 指数からおよそ15年サイクルの変化を読み取ることができ、最初 の5年で技術をこなし、次の10年で成長を享受してきたことがわ かる。過去60年では、最初がTV、次の14年がVTR、次の16 年がPC、そして最近の15年がモバイルである。
市場拡大は、生産性改善の結果であり、どこにリソースを投入 すれば、効率的に生産性改善を達成できるのかを競争しているの が電機業界と言える。一方、日本の電機メーカーは1990年代以降のデジタル化、グローバル化で地位を 低下させてきた。設備投資と意思決定のスピード、短い製品サイクルへの投資を低コストによるシェア 拡大で回収するという勝ち組の条件を満足することができなかった。 1990年代以降のデジタル化がもたらしたものは「増えない」=「悪」であり、時間は「買う」ものという概念である。
しかし、デジタル化を牽引してきた半導体の微細化技術の鈍化と限界が今後の世の中を変えることに なる。これからはデジタル化だけではなくアナログ/モジュール化技術が重要となって、製品の買い替え サイクルが長くなる。車やスマートハウス関連、産業用インフラ等である。コスト・価格は下落せず、 数量は増えない。「減らない」=「善」であり、時間は「我慢するもの」という概念が重要となる。技術 的には電子機器の高機能化の順番がプロセッサー、ストレージ/メモリーからインターフェースと変わり、 デジタルへの設備投資競争からアナログのノウハウの蓄積競争へと変わる。そして、今後の15年間で重 要なものはITと車、ITとFA/インフラのように、これまでの「分化」に代わる「融合」である。
【講演2】
「Morethan Mooreにおける新たな挑戦」
ローム株式会社 常務取締役 高須秀視氏
電子デバイスにおいて技術の見せ方が変わって来ている。単体 半導体ではなく、モジュールの時代が来る。それにしたがって研 究開発の考え方も変えなければならない。ロームは研究開発部門 にインキュベーション部を作った。狙いは研究開発段階でビジネ スモデルを作ることである。部品メーカーは直接エンドユーザー にアプローチし、そこから遡ってどのような技術を作るかを考え、 システムメーカーに提案することが必要である。また、パートナ ーシップを大切にし、大学や各研究機関との融合で研究開発を行っている。本日は、そういう考え方に基づいて進めている“MorethanMoore”の世界で何ができてい るか話をしたい。
ロームが取り組んでいる“MorethanMoore”の方向は次の2点である。第1はマテリアル・イノベ ーションによる半導体の新機能の開拓、第2は技術の融合による複合デバイスの開拓である。1990年代 初頭には既に“More than Moore”を意識して、以来これらの研究開発を長年にわたり進めてきた。ア プリ―ケーションとしてはエコの世界と健康医療を中心に取り組んでいる。
具体的には、まずローパワーを狙った強誘電体デバイスを使った不揮発性ロジックや不揮発性CPUである。これにより電力損失がほぼゼロというプロセッサーを実現できる。第2は各種波長のイメージセ ンサーである。X線イメージセンサー、UVイメージセンサー、CIGSイメージセンサー、長波長イメー ジセンサーなど通常の可視光領域では実現できない機能を有する各種のイメージセンサーを揃えており、 医療用等への応用が期待されている。パワーモジュールとしてはSiCの開発を進めていて、2年後の車 への搭載を計画している。これらは全て、半導体と異分野の技術との融合であり、世の中にないもので 時間がかかるが、根気よく進めていくことが必要である。
【講演3】
「Ⅳ族半導体を用いたスピントロニクス」 ~スピントロニクスはシリコンを超えられるか?~
京都大学大学院工学研究科 電子工学専攻 教授 白石誠司氏
スピントロニクスの分野では、最初に金属スピントロニク スを中心に発展してきた。金属スピントロニクスの典型的な 応用デバイスはMRAMであり、次世代不揮発性メモリーと して近年、開発が盛んに行われている。
2000年以降、半導体 であるGaAsやシリコンを使ったスピントロニクスの研究が 盛んになり、スピントランジスタの実現を目指すようになっ た。
現在では単一の元素で構成できるⅣ族のSiやGe、さら にグラフェンなどの分子性半導体を用いたスピントロニクスが、これらの材料のスピン軌道相互作用が比較的小さいことから、beyondCMOS素子であるスピ ンMOSFETやスピンロジックへの応用が期待され、近年盛んに研究が行われている。
スピントロニクスによるMOSFETの特長は不揮発性に基づく省エネルギーであり、その結果、 爆発的に増加しているIT機器の待機電力を一気にカットできることになる。
この分野の研究は日本が3~4年先行しており、技術優位性を確保できる有望な分野である。そし て、「スピントロニクスはシリコンを超えられるか?」という問いに対しては、まだ判然としないが、 インフラの蓄積と近年の急速な研究の進歩により、Si を使うスピントロニクスにはかなり可能性が あるといえる。日本の半導体産業の総力を結集すれば、CMOS代替スピンロジックの実現も不可能 ではない。
最後に、大見忠弘理事・副会長から、もう一度シリコンCMOS技術の見直しを含めて、本日の各講師からの話にあるように BeyondCMOS に向けて、 日本の総力を結集する時期 に来ているという閉会挨拶 があり、引き続いて交流会 が行われました。
交流会は、和田悟理事の司会で賑やかに行われました。挨拶 をSSIS副理事長の伊藤達氏が行い、乾杯を河崎達夫顧問が行 った後、和やかな懇談となりました。最後に佐藤和樹理事・副会長の締めでお開きとなりました。
また、翌日は茨木国際GCにて、オープンゴルフ大会を開催し、SSISとNEDIAの名誉をかけた 対抗戦を行い、残念ながらNEDIAは敗戦となりましたが、懇親を深めることができました。
[関連記事]
- 「SSIS&NEDIAシンポジュームin大阪」のご案内